長崎の夏のお盆の行事、精霊流しが開催。
この世とあの世の狭間、本邦の西の果てでは太陽さえも死して海中に没する。長崎では、亡くなった人々の魂は、西の果て、海の彼方にあるという苦しみも悲しみもない心やすらぐ世界へと向かうのだ。精霊流しは、この一年で亡くなった人々の御霊を西方浄土へとお船に乗せて送る行事。
精霊船の船首部分、”みよし”と呼ばれる部分は蓮華の花びらを模しており、ここにに故人の家名や町名が入る。船体は灯篭で飾られ、”みよし”ともども明かりがともされて煌々と輝きながら夜の長崎を曳かれてゆくのだ。
故人縁の形の船もある。上は軽トラック。故人は運送業であったようだ。
アンパンマンが大好きだったのだろうか。帆に描かれたアンパンマンの笑顔、遺族の故人への気持ちを想像すると涙が出そうになる。
長崎の精霊流しは爆竹をバンバンと炸裂させ、鉦をカーーンカーーンと打ち鳴らし、「ドーーーイ、ドーーーイ」と謎の掛け声を発しながら曳いてゆく。
この坂上家の精霊船は、今年の精霊流し屈指の規模であった。故人は格闘技好きであったのか、船にはリングが取り付けてあった。
ついでに言うと坂上家は、長崎出身の女優坂上香織の生家。
長崎の精霊流しが、グレープ(さだまさし)の歌う静かなイメージとあまりにもかけ離れていることがしばしば話題に上る。
想像を絶する爆竹の炸裂に皆肝を潰すからだ。初めて見たら「頭がおかしい」と思うに違いない。
精霊流しは夕方始まる。港の出口を除く三方を山に囲まれた長崎市内はさながら円形劇場、日が傾き始めた長崎の街に爆竹の炸裂音と鉦の音が山々に反響する。
中国の影響を色濃く受けた長崎市民は、花火が大好き。お盆は中華街で花火を袋いっぱいに買い込み、親戚一同墓場に集まり花火をする。そして精霊流しでは船一隻につき10万は遣うという(そのほとんどが爆竹)。精霊船を曳く人々は爆竹を鳴らしながら船を進めていく。爆竹は20本が一束になっているがこれを解いたり箱から出したりしないで、箱ごと焼く。
精霊流しを見物するにも注意が必要だ。あまりに激しい炸裂音に耳栓は必須のアイテムだし爆竹が飛んできて至近で炸裂することもしばしば。服に穴が開く、ちょっとした火傷は覚悟したほうが良い。
コンビにでは爆竹対策の耳栓が売られる。中段の画像で後方に立ち上る煙は爆竹の火柱だ。近頃は箱で焼くのも飽き足らず、段ボール箱いっぱいの爆竹に打ち上げ花火を向けて火球を撃ち込み、ワンカートンを一気に爆発させるという荒業が流行。
下段は精霊船が通ったあと。爆竹の燃えカスが道を覆う。が、翌日には近隣住民や市がきれいに清掃してしまう。
精霊船の先頭を飾るのがこの印灯篭。故人縁のシンボルが掲げられる。一番上は芸者さん?中段は鳶、下段はマージャンパイ。それぞれ故人の趣味とか仕事とかに関係があるものが描かれているというわけだ。
もし、私が死んだら・・・、印灯篭にはMEGADRIVEを描いてもらおう。
もちろん16BITは金文字で・・・。
精霊流し

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