軍艦島という俗称で知られる端島は、昭和49年の炭坑閉山より無人になった。その後最近まで三菱鉱業〜三菱マテリアルが所有、管理していたが高島町に無償譲渡された。
一応、端島は立ち入り禁止になっている。
「軍艦島」関係のサイトには上陸して撮影した画像を掲載しているところも少なくないが、そういうサイトには「現在、端島は上陸禁止になっています。渡航方法についてはお答えできません」とかいったテキストが免罪符のように掲げてある。が、現在も何も、三菱が管理していたころは三菱の所有だったので、昔から関係者以外立ち入り禁止だったのではないか?
まあ、とにかく船で周囲を回るだけなら別に問題はない。船で周囲を巡ってみると、長崎からは拝めない端島の西側を見ることが出来る。

島の西側は居住区で、9階建てのアパートなどのコンクリート建築がぎっしりと建ち並ぶ。狭い土地を利用するために大正時代から既に鉄筋コンクリートのアパートが建設されていた。左上の小さな三角屋根の建物は「端島神社」。
閉山後、無人になった島の建物は、誰も住まず、メンテナンスをする人もいないし、その必要もなかったので30年間風雨にさらされて荒れ放題。廃虚マニア恰好のターゲットだ。
現在、この「軍艦島」を保存しようという動きがある。観光資源として活かそうと考える人たちや、元端島の住人で崩れ行く故郷を守りたいという人たち、産業遺跡として研究の対象になると考える学者らがその中心。それぞれ究極の思惑は違うかもしれないが、とりあえず「保存」という方向は同じ。その実現ためには多くの人たちに端島のことを理解してもらわなくてはならない。
「軍艦のような島影」、「巨大な廃虚」というのは確かに分かりやすくて人々の関心を引く。また端島を含めた長崎県周辺の海底炭田が日本の近代産業や戦後の復興と高度成長を支えたとか、エネルギー革命の影響で閉山したという歴史は修学旅行の教材にも良いかもしれない。
端島は巨大な廃虚であるということよりもむしろ、廃墟になる前の端島での生活の様々な特異性や、炭坑開発の始まりから閉山によって無人の廃虚になってしまうまでの八十数年間の歴史とその背景こそが重用だとは思うが、とりあえず「軍艦」のような姿には子供たちも関心を持つだろう。
そう言えば、つい最近(2001年に)閉山した池島では炭坑を修学旅行生に見学させたりしているという。坑道を百メートル以上も地下に潜るというツアーは圧倒的な迫力で、教師にも生徒にもかなり好評だったようだ。

端島は石炭採掘の為に開発された島。だから、竪坑があった便利の良い東側、長崎側に炭坑の施設が集中している。逆に、西側の厳しい外海の波風に晒される方に住居が建設された。
コンクリートで固められた岸壁、立ち並ぶコンクリートのアパート、削られてむき出しの山肌。木々が生えるすき間もない。「緑なき島」という端島を舞台にした映画があったが、「緑なき島」という表現もそんなに大袈裟でもない。緑を欲した島民達はアパートの屋上に土を盛り、草花や幾つかの農作物、茄子、キュウリ、芋、稲(もち米!)等を植えた。特に、稲は収穫され、端島神社へ奉納されたという。

島は長年風雨に晒され波浪に洗われて、崩壊寸前!岸壁が崩落しているところもある。もっとも完全にほったらかしにしているわけでもないが、危険な場所は少なくない。
が、太公望達はそんなことは気にしない。全国の廃虚マニア垂涎の「軍艦島」に余裕で上陸、そして廃虚には目もくれずに魚を追ってただ釣り糸を垂れる。
確かに上陸は禁止されているが、釣り人達が平気で釣りをしていたことからも分かるように、上陸が全く不可能というわけじゃあない。「ドウシテモ上陸シタイヨウ」というヤンチャな廃虚マニアの方はあきらめずに「軍艦島」、「廃虚」系のサイトにメールで質問してみるとか、地方BBSや廃虚マニアの集まりそうなところで尋ねてみると意外に答えが見つかるかもしれないな。
まあ、観光資源として開発されるのならそのうち整備されて上陸できるようになるかもね。
【ムービー】

せっかくなので、端島を船から眺めた動画。(real形式、それぞれ1MBくらい。Real Playerのダウンロードはこちらから。)
・hasima_mov01.rm ストリーミングはこちら。
・hasima_mov02.rm ストリーミングはこちら。
・オマケ、端島をパノラマで撮影してみた。hasima_la.zip(800kbくらい)
【参考リンク】
■インターネット博物館「石炭・金・地熱」 石炭コーナーに日本の石炭産業の事が分かりやすく解説してある。
■浮浪雲 NPOである「軍艦島を世界遺産にする会」の活動を支えるdoutoku氏のサイト。
■SAIGA yuji,雑賀雄二 「軍艦島」と「天主堂」ばっかり撮ってる人。「軍艦島 棄てられた島の風景—雑賀雄二写真集」と「天主堂—光の建築」など。
■インダストリア 管理者はもと端島住人。「軍艦島グラフィティ—おもいでのさんぽみち」の著者。これがとても切ない絵本なんだよ。上記の写真集よりこっちをお薦めしたいくらいだ。いつまでも軍艦だ、廃墟だと騒ぐのも大人げない。端島の本当の姿は廃虚の向こうにこそある。
■軍艦島 ある島のお話〜長崎県の端島を知っていますか?〜 「軍艦島」についての書籍は幾つか出ているがいちいち読むのが面倒臭い。「軍艦島」について調べたかったらとりあえずココを見ると良い。参考資料なども多く紹介してある。
■軍艦島2002春。2ちゃんねら〜がついに「軍艦島」上陸。だいたい「軍艦島」をテーマにしたサイトは似たようなものが多い。いかに廃墟をカッコヨク見せるかと考えた結果かどうか知らないが、黒っぽいバックに同じような廃虚の写真がただベタベタ貼り付けてあって、すぐに飽きてしまう。しかし、ココはちょっと違う。画像は大きく見やすく、それぞれにコメント付き。コメントの「〜ですよ?」が気に障るが、汲み取り式のトイレなど意外なところに眼をつけており、他と違った切り口で「軍艦島」を見ているのが面白い。他の「軍艦島」系のサイトでは「軍艦島」のアパートの室内写真は沢山あるが、その間取りに言及しているところがココの他にいったい幾つあるだろうか?と、いうか「軍艦島」の画像にコメントや解説がついているところは少ない。たまにコメントがついてるかと思うと、廃墟を語るのにありがちなポエムだったりしてな。
このサイト、レポートが途中で止まっているのが非常に残念。探索の続きを見たかった!
ところで、端島への上陸は禁止されているが、船で周囲を見て回ることは簡単にできる。
■やまさき海運 「軍艦島クルーズ」という遊覧船があるようだ。
■美津丸 「軍艦島周遊」の予約受付があるようだ。
そういえば「軍艦島」をモチーフとしたと思われるエロゲー(18禁)もある。
■百鬼 〜淫黙された廃墟〜
あ、あと現在、端島は上陸禁止になっています。渡航方法についてはお答えできませんので質問しないでね。(お約束)



コメント
軍艦島探検
夏休みは廃墟を見よう…長崎・軍艦島に観光船/読売
長崎半島沖に浮かぶ「軍艦島」=正式名・端島(はしま)、長崎県高島町=の周囲を巡る観光船が3日、就航した。
島民の「生活の足」から観光路線に姿を変えて約30年ぶりに復活した第1便には観光関係者ら約6…
軍艦島は小学生の頃見た公共CMのせいで
何か怖いイメージがありましたが、
今こうしてみると実に特異で興味深い存在だと思いました。
軍艦島の最盛期の時の世界観をシミュレートして
ゲーム化してみると案外面白い物ができるかもしれませんね。
やまさ海運 炭鉱跡観光を強化
2005/01/14日経朝刊。 遊覧船事業のやまさ海運が、池島炭鉱の団体観光ルートとして2005年3月より長崎港〜池島に高速船の不定期航路を開発。軍艦島観光への活用も。 関連blog ゲーム貴族 軍艦島と呼ばれる島 …