
三月三日は桃の節句。長崎ではこの時期になると、お菓子屋さんの店先に「桃カステラ」が並ぶ。桃カステラは、文字通り桃を象ったお菓子。スポンジ状の生地に桃の形をした砂糖細工が乗っかるという非常に甘いお菓子だ。もともとは初節句のお祝い返しに配られる風習があったようだ。
不老長寿の果実である桃は、中国文化の影響を強く受けた長崎において慶事の象徴としてしばしばおめでたい席に登場する。その一つがこの桃カステラだ。桃を尊ぶ中国文化、ヨーロッパ伝来のカステラ、異文化を混ぜ合わせたこのお菓子、実に長崎らしい。ふんだんに砂糖を使用した桃の細工も、かつて大量の砂糖を輸入し、日本でもっとも砂糖に近かった唯一の海外貿易港であった昔を偲ばせる。
実は、俺、桃カステラは苦手だった。幼い頃に食べた桃カステラはそんなに美味い物ではなかった。
緑色の葉や茶色の茎までついた凝った造形、うっすらとピンクに染まった美しく艶々の桃。幼い目には夢のようなお菓子に見えた、しかし、食べてみると桃カステラは砂糖で作られた桃の部分が異常に甘く、そしてカステラ部分はボソボソとしていて、とてもじゃないが完食できるシロモノではなかった。
「お祝いの品だから、観賞用だから、美味しいモンじゃないんだ。」
夢が壊れた瞬間だった。
「食べなきゃ良かった。」
と、思った。
そんな苦い記憶(甘いお菓子なのに)を思い出しつつ、今日買ったばかりの桃カステラを一口。
「ンッ!?」
美味いッ!
砂糖で出来た桃は相変わらず、すごく甘いが口に含むとトロリと溶けてカステラに絡む。カステラの部分も記憶とは違ってふっくらしっとり。
俺が昔喰った桃カステラ一体何だったのだろう、たまたまハズレを引いたのか?
それとも、あれから長崎の菓子匠達は切磋琢磨して、桃カステラを慶事のお飾りから真に美味いと思える正しいお菓子に成長させる事に成功したのであろうか!?
とにかく、ペロリ完食。美味しかった!
ちなみに、五月五日は鯉を象った鯉菓子が登場する。これがまた俺の幼い頃の記憶に因れば、一口食べただけで虫歯になりそうなほどに甘く、とてもじゃないが・・・。



コメント
こんにちは!先日は当blogへのコメント、ありがとうございました。 以前から、断りなくリンクをさせて頂いていたと思うのですが(ぎゃっ)、相互リンクをして下さって本当にありがとうございました。 今年は娘の初節句でしたが、あまーい和菓子類はもちろん食べられず、親が食べてしまいました!ぺろり!